日本維新の会 世田谷区議会議員 若林りさ
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議会質問

2025.06.05

2. 「デジタル民主主義とプルラリティ思想を活かした行政参加のあり方について」台湾初代デジタル大臣オードリー・タン氏提唱!【令和7年第2回定例会一般質問】

【令和7年6月第2回定例会一般質問】

2.「デジタル民主主義とプルラリティ思想を活かした行政参加のあり方について」(質問数4+要望1)

*全文を掲載しておりますが、最後の《まとめ》をご覧いただくことで、内容を簡潔にご理解いただけます。

<質問全文>

次に、デジタル民主主義とプルラリティ思想を生かした行政参加の在り方について伺います。

プルラリティとは、多元性を意味し、異なる立場や価値観を持つ人々が互いの違いを前提に意見を出し合い、調整しながら合意を形成していく考え方です。近年、AIの進化によって、シンギュラリティ、すなわち単一の最適解を導き出す力が注目されています。確かに技術の発展は、効率的な判断や分析に大きな可能性をもたらします。しかし、行政において本当に重要なのは、一つの正解を求めることではなく多様な声を受け止め、調整し、共に答えをつくっていく力です。

そうした姿勢を支える思想的な基盤がプルラリティ、多元性であり、これは今後の行政にこそ積極的に取り入れるべき価値観だと考えます。デジタル技術の進展により、これまで拾い切れなかった声が可視化され、住民参加の幅も広がっています。今こそテクノロジーを手段として生かしながら、プルラリティに基づく合意形成を重視する行政運営へと進化させるべきではないでしょうか。

この考え方を実際の政策に落とし込んだ先進事例が、台湾の元デジタル大臣のオードリー・タン氏によるデジタル民主主義の取組です。誰もが参加できるオンラインプラットフォーム、vTaiwanなどを通じて、年齢や立場を問わず、多様な意見が政策に反映される仕組みを構築し、社会的差異を超えた対話と熟議がテクノロジーによって実現されています。

一方、本区の状況を見ると、無作為抽出による区民意識調査などは行われているものの、回答は50代以上の高齢層に偏り、若年層や子育て世代、外国ルーツの方々の声が十分に反映されているとは言えません。また、陳情を出すという方法も一般の区民にはハードルが高く、実際に声を届けられる人は限られています。

例えば、ベビーシッター制度を導入してほしいという声は以前から多く寄せられてきましたが、世田谷区では23区の中でも対応が最も遅れてきました。今回、3440名もの署名がオンラインで集まり、陳情として提出され、議会で趣旨採択となったことで、ようやく区民の声が届いた形です。しかし、こうした多くの声がこれまで反映されてこなかった現状は、真の意味での区民参加と協働による区政運営とは言えないのではないでしょうか。行政は、こうした切実な声こそ優先的に受け止め、制度化に向けた議論を進めるべきです。今後はプルラリティ、多元性の視点を持ち、多様な声をすくい上げる仕組みづくりと併せて、ベビーシッター制度の早期導入を強く求めます。

そこでまず、現在のパブリックコメントなどにおける参加者の実態について伺います。プルラリティ思想の観点からも、年齢層、職業、居住年数などの属性分析は行っているのでしょうか。また、参加者の偏りや声を届けることができないサイレントマジョリティーの存在について、区としてどのような認識をお持ちかお聞かせください。

次に、区民参加のハードルを下げる取組について伺います。現代社会では、仕事や育児、介護など様々な事情により多くの区民が、平日昼間の説明会に参加するのは困難です。こうした参加したくても参加できない声をどう拾い上げるかは、区政の正当性に関わる重要な課題です。

区では、令和5年度にデシディムが一部導入されましたが、例えば次期基本計画の策定の素案に関する意見募集では、集まった声は僅か6件にとどまり、区民の声を十分に反映しているとは言い難い状況です。こうした背景を踏まえ、若年層、子育て世代、就労中の世帯など、従来の手法では参加が難しい層へのアクセス保障について、区としてどのような改善策を検討しているか伺います。

特にオンライン参加やデシディム以外のデジタル民主主義を促進でできるデジタルツールの活用を含めた新たな意見収集手法の導入について、区の見解をお聞かせください。

続いて、区民参加の実効性を高めるための仕組みづくりについて、現在の意見の取扱いや説明のプロセスが十分かどうか、区の認識を伺います。また、政策への反映事例の周知や反映状況の可視化を進めることで、区民参加の促進と政策形成の透明性向上につながると考えます。この点について、プルラリティ思想を踏まえた多元的な意見集約の在り方についても、区の見解と意気込みをお聞かせください。

 

→《区の答弁》

続きまして、行政参加について4点、初めに、現在のパブリックコメントについてお答えいたします。

議員御指摘のプルラリティ思想の観点も踏まえ、区民からの意見や声については、区長へのメール、区民意識調査、区政モニターアンケート等のほか、区民の生活に広く影響を及ぼす区の基本的な施策等を策定する際は、素案等がまとまった段階でパブリックコメントを実施し、区民の皆様が意見や提案、要望を述べる機会を設けております。パブリックコメントは、回答者の属性等の詳細は記入いただいていないため分析は難しいですが、令和6年度の区民意識調査では、十代、二十代の回答率が低いほか、女性よりも男性の回答率が低いなど、回答者属性に一定の偏りがあると認識しております。

次に、参加のハードルが高い層へのアクセス保障についてお答えいたします。

区は、新たな行政経営への移行実現プランにおいて、広聴機能の強化を掲げており、今年度より、区民意識調査と区政モニターの対象年齢を満15歳まで引下げを行ったほか、満九歳から満14歳を対象とした子どもの声アンケートを新たに実施いたします。また、四月より、外国籍の方がより意見を出しやすくなるように、外国人住民を対象としたホームページに、パブリックコメントや区長へのメールのページへのリンクを設けるなど改善に取り組んでおります。

次に、デシディム以外のツールの活用についてです。

基本計画策定で試行導入したデシディムの検証結果では、デジタルプラットフォームで意見交換を行う際はテーマを明確にすること、オンライン上でのワークショップ機能を活用し、参加する区民の輪を広げることが活性化のポイントであると報告しております。本年7月から開始するユースカウンシル事業において、子ども・若者部が実証実験としてデジタルプラットフォームを活用し、子ども・若者への情報発信、意見聴取を行うこととしております。

引き続き、これらの結果も踏まえながら、他領域への横展開やデジタル民主主義を促進できるさらなるツールの可能性を模索するなど、引き続き検討を進めてまいります。

最後に、区政への参加意識向上と政策形成プロセスの透明性確保についてお答えいたします。

パブリックコメントで寄せられた意見は、意見に対する区の考え方とともに議会へ御報告し、議会での御議論を含め検討を行った上で、施策等へ必要な反映を行っております。策定後は、ホームページと区報を通じて寄せられた意見と区の考え方、施策等へ反映した内容等を公表しております。

区民が様々な方法で区政に参加しやすくなるよう取組を充実することは、区政への参加意識を向上させ、政策形成プロセスの透明性を確保する上で極めて重要であるというふうに考えております。区としましては、これまでの取組の課題や今年度からの新たな取組状況を見つつ、今後も議員御指摘のプルラリティ思想、いわゆる多様性の視点も踏まえながら、幅広い層からより多くの意見を集められる仕組みを検討してまいります。

以上でございます。

→《再質問:意見》

○11番 若林りさ議員 まず、行政参加の在り方ですけれども、プルラリティ思想を取り入れ、デジタル民主主義の促進に前向きに検討していただけるとの御答弁で、今後に期待をいたします。

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《まとめ》

私が調べた限りにおいては、日本で初めて議会で「プルラリティ」を取り上げ、行政参加のあり方について質問しました。プルラリティとは、一つの正解を導くのではなく、多様な声を前提に調整し、共に答えをつくる姿勢を重視する考え方です。台湾の初代デジタル大臣オードリー・タン氏は、この思想をもとにオンラインプラットフォームを活用し、多様な意見を政策に反映させる「デジタル民主主義」を推進しており、その先進例を紹介しました。

一方、世田谷区の現状では、パブリックコメントや区民意識調査の回答が高齢層に偏っており、若年層や子育て世代、外国籍住民の声が十分に反映されていません。例えば、ベビーシッター制度を求める声も長年届かなかったものの、オンライン署名3,440筆によってようやく議会で趣旨採択された事例を挙げ、切実な声を確実に反映できる仕組みづくりと制度化の必要性を訴えました。

区は答弁で、十代以下も対象に含めた新たな調査や外国籍住民への情報発信強化を進めていることを説明。また、デジタル参加ツール「デシディム」の試行を踏まえ、ユースカウンシル事業での活用を予定していることも示しました。さらに、寄せられた意見と区の考え方を公表し、政策形成の透明性向上に努めていると答えました。

私は、区がプルラリティ思想を踏まえ、デジタル技術を活かした行政参加に前向きな姿勢を示したことを大きく評価し、今後の実効性ある展開に期待しています。

そして今後も革新的な政策提案に果敢に取り組み、区民の声がより届く区政の実現を目指してまいります。

  • 2. 「デジタル民主主義とプルラリティ思想を活かした行政参加のあり方について」台湾初代デジタル大臣オードリー・タン氏提唱!【令和7年第2回定例会一般質問】